恋と、嘘と、憂鬱と。

その間にも。

「…っふぇ…ひっく」

と、泣きじゃくる女の子。

この子が落ち着くまで、一緒にいてあげなくちゃ。それで、もし迷子だったら店員さんに声かけて探してもらおう。

そう思い、ポンポンと優しく女の子の背中を撫でていたその時。

「…心音!」

少し遠くから、焦ったように誰かの名前を呼ぶ男の人の声が聞こえてくる。

「っ、お兄ちゃん!」

その声に反応したのは、私の前で泣いていた女の子だ。

名前を呼ばれた瞬間、パッと泣き止み声のする方向に視線を向けている。

わぁ…この子。すっごく可愛い…。

パッチリ二重の目元に長いまつ毛は、くるんと上向きにカールしている。

さらに、ぷっくりとしたピンク色の唇に薔薇色の頬は、まるで外国のお人形のように見えた。


< 228 / 405 >

この作品をシェア

pagetop