恋と、嘘と、憂鬱と。
「久瀬先輩に…他に好きな子ですか…?」
信じられないような話に私は目をしばたたかせる。
遥奈先輩より、好きな人…?
そんな人が本当にいるの??
「そ。私はその子のかわりだったのよ。まぁ、アイツがちゃんとそのことに気づいてるのかは今もわかんないけどね〜」
「えっと…それが遥奈先輩の勘違いってことは…」
「…ううん。残念だけどそれはないかな。だってわかるよ、そんなの。当時の私はちゃんと颯真のこと好きだったから」
「……」
懐かしそうに目を細め、言い切る遥奈先輩に私は何も言えなくなってしまう。
「ふふ。ま、高校上がって依都と出会ってふっきれたつもりだよ?さてと、私は正直に話したよ?次は季里ちゃんの番なんじゃない??」
クリクリとした瞳でジッと私を見つめ、話を促す先輩。
どうやら遥奈先輩には、お見通しだったみたい。
かなわないなぁ、遥奈先輩には…。
今日、街で会ったのは偶然じゃなく必然だったのかもしれないと考えてしまい私は小さく微笑んだ。
「…じつは」
そして、私は語り始めた。
颯真くんとの出会いから別れ。
高校受験のきっかけ、久瀬先輩との出会い。
さらには昨日の出来事まで。
全てを話したのは遥奈先輩が初めてだった。