恋と、嘘と、憂鬱と。
「いいから!僕も自然見てみたいだけだし。行く時はちゃんと教えてよね」
最後にそれだけ言い残し、充希くんもカフェ店内に戻ってしまう。
後に残された私はポカンとした表情で彼の後ろ姿を見つめた。
都会っ子の充希くんにとって田舎は珍しいのかもしれないけど…。
まさか彼の口から私の田舎に行きたいなんて、そんな言葉が飛び出すと思わなかった。
充希くん、虫とか苦手そうだけど大丈夫かな…?
海の近くだとフナムシとかもいるし。
小さい頃から住んでいる人たちにとっては日常茶飯事だが、玲子さんも来たばかりの頃はよく悲鳴を上げていたことを思い出す。
そんな的はずれな心配をしつつ、私もようやく店内へと足を進めたのだった。