恋と、嘘と、憂鬱と。

アハハと、笑ってはみたものの上手く笑顔が作れなくて。

そんな私を見て、若干、眉をひそめた充希くん。

きっと、また呆れられてるんだろうなと思い、私が内心ため息をこぼした時。

「…僕だったら季里にそんな顔、絶対にさせないのに」

充希くんが、吐き捨てるように言い放ったその言葉私は言葉を失った。

今のどういう意味…?

目を見開く私を、充希くんが真剣な表情で真っ直ぐ見つめるものだから、思わずドキンと胸が高鳴る。

「季里が颯真くんのこと好きなのはわかってるし。正直、僕は勝てない戦は出ない主義だけど…」

「み、充希くん?」

「好きな子が…季里が、傷つく顔は僕はもう見たくない」

"好きな子"

ハッキリと、彼の口から出た言葉に私は小さく息を呑んだ。

「あー、もう。こんな形で言うつもり全然なかったのに。ゴメン、僕のほうが季里を困らせてるよね」

「そんなことないよ」

フルフルと首を横にふる私。

充希くんのことは、好きだ。
優しくて、話してて楽しいし、何より都会に来て間もない私の近くにいて、支えてくれた。それに、颯真くんの相談にも親身になってのってくれて…。

ただ、"恋愛"として今まで意識をしたことがなかったから、どう反応していいかわからない。
< 369 / 405 >

この作品をシェア

pagetop