恋と、嘘と、憂鬱と。
ニコッと微笑んだ玲子さんは、私にペコッと頭を下げてくれた。
「いえ、私は何も…」
「ううん。きっと季里ちゃんに話したことがきっかけになったんだと思うわ。だからね、ありがとう」
優しく言葉を紡いだ玲子さんは、次の瞬間、真剣な表情を浮かべると。
「颯真、最終のフェリーで本土に帰って、今日は、心音ちゃんとそっちのホテルに泊まるみたい。最終便だから…19時発だと思うわ」
そう教えてくれる。
19時発…。
スマホで時間を確認すると、現在の時刻は18時。今からフェリー乗り場に行けば追いつくはずだ。
「季里!急ぐよ」
「うん…!玲子さん、ありがとう」
行き先がわかった私達は、お互いに顔を見合わせると、フェリー乗り場に向かって足を進めようとする。
その時。
「2人とも待って!私がフェリー乗り場まで送るわ。車に乗ってちょうだい」
玄関先から車のキーを持ってきた玲子さんは車のドアロックを解除した。