恋と、嘘と、憂鬱と。

ニコッと微笑んだ玲子さんは、私にペコッと頭を下げてくれた。

「いえ、私は何も…」

「ううん。きっと季里ちゃんに話したことがきっかけになったんだと思うわ。だからね、ありがとう」

優しく言葉を紡いだ玲子さんは、次の瞬間、真剣な表情を浮かべると。

「颯真、最終のフェリーで本土に帰って、今日は、心音ちゃんとそっちのホテルに泊まるみたい。最終便だから…19時発だと思うわ」

そう教えてくれる。

19時発…。

スマホで時間を確認すると、現在の時刻は18時。今からフェリー乗り場に行けば追いつくはずだ。

「季里!急ぐよ」

「うん…!玲子さん、ありがとう」

行き先がわかった私達は、お互いに顔を見合わせると、フェリー乗り場に向かって足を進めようとする。

その時。

「2人とも待って!私がフェリー乗り場まで送るわ。車に乗ってちょうだい」

玄関先から車のキーを持ってきた玲子さんは車のドアロックを解除した。
< 374 / 405 >

この作品をシェア

pagetop