恋と、嘘と、憂鬱と。
「玲子さん、車出してくれてありがとうございます」
助手席に乗り込んだ私は、フェリー乗り場に向かって車を走らせる玲子さんに声をかける。
「気にしないで。むしろ、このくらいいくらでもするわ。たぶん颯真達フェリー乗り場まではバスで行くって言ってたからすぐ追いつくはずよ」
運転中で、視線は前を見つめたままの玲子さんは「まかせて」とつぶやくと少しスピードをあげた。
徒歩だとわりと時間がかかるフェリー乗り場までは、車やバスだと10分程度で到着する。
車内でソワソワしている私に向かって。
「季里、天文部の人達には適当に理由つけて、チャットでメッセージ送っといたからゆっくり颯真くんと話しておいでよ」
と、声をかけてくれた充希くんの言葉にハッとした。
言われてみれば、“眞子ちゃんを送ってくる”と真凛ちゃんと美桜先輩に告げて旅館を出てから随分、時間が過ぎている。
充希くんも中々帰ってこない私を心配して迎えに来てくれたわけだし。
「充希くん、ありがとう…」
「ふふ。充希くんって気が利くのね〜。颯真とは大違いだわ。季里ちゃん、付き合うならこういう子の方がおばさんオススメよ」