恋と、嘘と、憂鬱と。
「颯真くん、それはこっちのセリフだよ」
ぶっきらぼうに返す充希くんに一瞬、颯真くんは目を丸くする。
しかし、すぐに。
「それもそうだな…。ゴメン」
素直に頭を下げて、私達に謝った。
「季里ちゃん…?」
そんなやり取りを不思議そうに見つめる心音ちゃんは、私の手をギュッと握る。
私も「大丈夫だよ」と答える代わりに優しくその手を握り返した。
そして。
「玲子さんと、連絡とってたんだね…」
真っ直ぐに、私は颯真くんを見つめて言葉を紡ぐ。
「季里には黙ってて悪かった。でも、玲子おばさんは悪くないんだ、俺が口止めしてたから…」
申し訳なさそうな表情を浮かべる彼に私はコクリと頷いた。
「うん…。さっき、玲子さんから話聞いたよ。実は私、颯真くんたちが玲子さんの家にいた時、たまたまはち合わせしちゃって。でもね、出てくる勇気がなくて、つい隠れちゃった」
「……」
「その後、充希くんにね。"颯真くんにちゃんと言いたいこと言ってきな"って言われて思ったんだ…。あの日、颯真くんが私に正体を明かしてくれた時…。自分の話したかったこと話せてなかったなって」