恋と、嘘と、憂鬱と。

そこまで言うと、私は小さく息をつく。

「だから、今まで言えなかったことも今日はちゃんと話したい…です」

最後の方は、少し尻すぼみになってしまったが、久しぶりに颯真くんに対して本音を伝えることができた気がした。

そんな私の背中を押すように。

「心音ちゃんは、僕が見とくよ。それにもうすぐ玲子さんも来るから心配しないで話してきて」

と、充希くんが颯真くんに向かって声をかける。

「悪いな…。心音、そこのお兄ちゃんとちょっと待っててくれ。季里、外に出ようか」
 
「…うん」

颯真くんに促され、私は一緒にフェリー乗り場の外へと足を進めた。



*.+ ❀ *:・゚*


外に出ると、辺りはだいぶ暗くなってきていて遠くの海上に日が沈むのが見える。

ここからの景色は、昔と変わらないな…。

小学生の頃、フェリーに乗って都会へ帰ってしまう颯真くんを毎年、見送りに来てたっけ?

すると。

「久しぶりに来たけど、ここは全然変わらないな。玲子さんの家に行く道のりも、フェリー乗り場も俺の記憶にあるままで驚いたよ」

そう呟き、懐かしそうに目を細める颯真くん。
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