恋と、嘘と、憂鬱と。
「確かに変わらないかも…。あ!そういえば、小学生の時、フェリーが来るまでこの堤防から一緒に海見たの覚えてる?」
「覚えてるよ。昔は背も小さかったからこの堤防もすごく高く感じてたけど…」
ふいに、堤防に手をかけた颯真くんは、ひょいっと軽く上にあがってしまうものだから、私は目を丸くする。
そして次の瞬間、「ほら、季里も来いよ」と私に向かって手を差し伸べてくれた。
「う、うん…」
コクリと頷き、私がその手をソッと掴むと、颯真くんはいとも簡単に私の身体を堤防の上に引き上げる。
もうだいぶ、日が落ちてしまった空は、先ほどまではオレンジ色だったのに、すでに濃い紫色に染まっていた。
「…綺麗だな」
「そうだね…」
学校とは違って雰囲気が柔らかい颯真くん。
その姿に、私はなんだか昔の彼と話しているような感覚におそわれる。
その時。
「…あのさ、季里」
先に口火を切ったのは颯真くんだった。