恋と、嘘と、憂鬱と。
真っ直ぐに私を見つめる颯真くんは、目をそらさない。
結局、恥ずかしくなって先に視線をそらしたのは私の方だった。
「私は何も…。それこそ、颯真くんが本当に辛かった時は何もできなかったし…」
…その時に近くにいたのは…遥奈先輩だもん。
心の中ではそんなことを思いつつも、口には出せなかった。
「いや、本当に俺が吹っ切れたのは季里のおかげなんだよ。あの日、季里に本当のことを話せたことで、自分の中で整理できた部分もあったし…。玲子おばさんにも連絡できたからさ」
「そっか…。少しでも2人の助けになれたならよかった。玲子さん、ずっと颯真くんのこと気にかけてたから」
「季里には心配かけてばっかで本当、ゴメン。ずっと、俺のこと気にかけてくれてありがとう」
「…っ」
そう言って、優しく微笑んだ颯真くんが、昔の颯真くんに重なって見えて思わず言葉に詰まってしまう。
ギュッと胸が締め付けられ、目頭が熱くなって…。
気づけば、今まで我慢していた気持ちが涙となって、ポロッとこぼれていた。