恋と、嘘と、憂鬱と。
自分でも何で泣いてるのかわからない。
「…っ。グスッ…」
ただ、気持ちが溢れてしまって。
泣いたら颯真くんを困らせてしまうってわかっているのに、溢れる涙をすぐに止めることができなかった。
そんな私を見た颯真くんは、隣に座る私の背を優しくさすってくれる。
その時、ふと。
『季里、大丈夫。俺がついてるから』
私が昔、道ばたで転んで泣いてた時もこんな風に優しく背中をさすってくれたことを思い出した。
あれはたぶん私が幼稚園の年長で、颯真くんが小学校1年生の時のこと。
結局、泣き止まなかった私をおぶって、颯真くんが家まで送ってくれたんだよね。
懐かしい記憶につい、自然と頬が緩むのを感じた。
きっと手のかかる妹くらいに思われていたんだろうなと、今更ながらに再認識する。
これ以上、泣いたって、昔の私とは立ち位置は変わらない。それに、今日こそは、ちゃんとあの時言えなかった気持ちを伝えないといけないもの。
そう思った私は、ゴシゴシと自分の目もとを手で拭い、「颯真くん、ありがとう。もう大丈夫だから」と口を開く。