恋と、嘘と、憂鬱と。
フルフルと首を横に振り、力なく微笑んだ私に対して。
「季里、ちょっと待て!何でそこで遥奈先輩が出てくるんだ?」
間髪入れずに颯真くんはストップをかけてきた。
なんだか慌てている彼に私も戸惑ってしまう。
「え、だって…颯真くん、中学の時先輩と付き合ってたんだよね…?それに遥奈先輩のこと、この前、心音ちゃんを受け入れるきっかけをくれた人だって言ってたし…。高校も先輩追いかけて緑葉谷に来たんじゃないの?」
おずおずと私がそう問いかけた。
「確かに、心音のことに関してはきっかけをつくってくれた人で、中学の時は…好きだったし、一時期付き合ってたのも本当だけど…今は違うから」
ドキッ。
颯真くんと目が合った瞬間、思わず高鳴った鼓動。
だって、なんだかさっきまでの雰囲気と全然、違うから…。
「つか、緑葉谷は元々遥奈先輩関係なしに俺も志望校だったし」最後にそう付け加えた颯真くんは、小さくため息をつく。
「そ、そうだったんだ…」
「そ。遥奈先輩のことはまぁ…しばらく引きずらなかったと言えば嘘になるけど…。先輩と離れてた期間で気持ちは整理ついてるし」