恋と、嘘と、憂鬱と。
両親の離婚、離婚の原因となった母親の浮気…。
そして急な再婚と、妹の心音ちゃん。
色々なことが重なって、中学生になったばかりの颯真くんが戸惑うのは当然だ。
自分がもし同じ立場だとしたら、どうすればいいのかわからなくてきっとパニックになってしまうと思うし…。
だからこそ、当時の颯真くんの気持ちを考えると彼の心に余裕なんてあるわけなくて。
「颯真くんが、大変だったことはちゃんとこの前話してもらったし…。私が同じ立場だとしてもたぶん、手紙を出す余裕なんてないと思うもん。だから、気にしないで?」
小さく首を横に振り、私は颯真くんの言葉を否定した。
その瞬間、ゆっくりと顔をあげた颯真くん。
パチっと視線が合ったその瞳は、少しだけ揺らいでるように見えて…。
「…そ」
なんだか初めて見る颯真くんの表情に不安になった私が思わず名前を呼ぼうとした、その時。
「好きだ…」
ポツリと呟いた彼の声は消え入りそうなくらい小さかった。