恋と、嘘と、憂鬱と。
もしかしたら、この頃だったのかもしれない。
颯真くんが、おばさんの浮気とか…色々知ってしまったのって。
「季里」
ふいに名前を呼ばれ、私は颯真くんの方に視線を向けた。
「俺、今まで親の離婚のこと、心音のこと…ずっと1人で抱えてさ…。気づかないうちに人と距離置くようになってたんだ」
「うん…」
「でも、変わらない季里を見てると、少しずつ素直になれたんだよ。…本当、ここにももう来ることないと思ってたけど、季里のおかげだな…ありがとう」
フッと笑みをこぼし、私に優しげな視線を向ける颯真くん。
「ありがとう」彼のそのひと言に、私もようやく心から笑顔になれた気がした---。
*.+ ❀ *:・゚*
と言うか、今更だけど私、颯真くんと「両想い」だったってことだよね…。
ようやく話が落ち着いて、冷静になって考えると先ほど颯真くんに言われた「好き」という言葉を思い出していた。
その時。
『本日の最終便が、10分後に出発いたします。ご乗船予定の方は搭乗口までお願いいたします』
そんなフェリー搭乗のアナウンスが聞こえてきて、ハッとする。