恋と、嘘と、憂鬱と。

「颯真くん、昔からモテるから…心配」と季里が1人でヤキモキしていたのを思い出し、私は内心クスッと笑みをこぼした。

お互い様なんだけどね〜。季里って本当、自分に与えられる好意には鈍いんだから。あれは久瀬先輩が気の毒だわ。

だって、私、この前見ちゃったんだ。

移動教室で、私と季里が2年生の廊下を歩いていた時。

『おい…お前、声かけろよ…』

『今、チャンスじゃね?よし…!』

明らかに季里を見て、声をかけたそうにしている2年生男子に対して。

『あの子に何か用…?』

そう言って、笑顔で牽制かけている久瀬先輩を。

季里の方が私の姿が重なってたから気づいてなかったみたいだけれど、教室側を歩いていた私はバッチリ目撃してしまったのだ。


*.+ ❀ *:・゚*


まぁ、あの一件から私も前よりは季里のこと、久瀬先輩に任せてもいいかなって思えたんだけどね。

そんなことを考えつつ、早足で部室へと続く廊下を歩く私。

実は今日、美桜先輩が先日出たばかりの推しアイドルのライブDVDを貸してくれるという約束なのだ。

部室で渡すって言ってたし。もう来てるかも…!

「しつれいしまーす」

ウキウキとした気分で、ガラッと入口の扉を開いた私。

しかし、そこにいたのは予想外の人物で…。

「あれ?葉山ちゃんじゃん、珍しい〜。今日は1人?」

そう言って、私に声をかけてきたのは、2年の霧谷理央先輩だった。
< 399 / 405 >

この作品をシェア

pagetop