恋と、嘘と、憂鬱と。
美咲ちゃんを皮切りに、
「いや〜季里ちゃんは頑張っとったもんなぁ。それに、この島からあんな優秀な高校に受かる子どもが出るとは思わんかった。でも流石は堀田先生とこのお嬢さんやな」
「ほんと、ほんと。図書館で頑張ってたものね。私らも関心しとったんよ」
「あ、ありがとうございます…」
次々と、近所の人たちから褒められ、私もついつい頬が緩む。
ちなみに、堀田先生というのは、私の父のこと。
島で唯一の病院、堀田医院の医者ということもあり、かなり多忙。
病院で寝泊まりすることも多く中々家に帰ってこない日が続いていた。
…お父さんにも直接報告したかったけれど、また今度ね。
そんなことを考えていると、
「季里!今日はごちそうよ。ほら、あんたの好きなケーキも買ってきてるから。早くこっちいらっしゃい。みなさんも一緒にお祝いしてってくださいな」
台所の奥から出てきた母が満面の笑みを浮かべそう言ったのだ。
ガヤガヤ…。
「東京だったら一人暮らし?下宿先探さないとね〜」
「そうね。明日にでも探し始めないとだわ〜、なにか知ってたら教えてね」
賑やかなリビングでは、母と美咲ちゃんのお母さんが楽しそうにそんな会話している。
他の人たちも思い思いにご飯を食べたり、飲み物を飲んだり嬉しそうだ。