恋と、嘘と、憂鬱と。
私の反応を伺いながら、玲子さんは話し出す。
「あなた達が仲良かったことは知ってるわ。でも、颯真の両親が離婚してからは、あの子が島に顔出すこともなかったし。私に最後に連絡があったのは、緑葉谷高校に受かったっていう報告だけ。その後はパッタリだし」
ハァ…と、小さくため息を溢す玲子さんはどことなく悲しそうだ。
颯真くんが中学生になった頃、ご両親が離婚して、確か母親の方に引き取られるのだと玲子さんから聞いたことを思い出す。
「季里ちゃんが東京の私立高校受けるって近所の方から聞いた時は驚いたわ。…しかも、緑葉谷高校…もしかしたらって…」
「…うん。そうだね、玲子さんの言うとおり、きっかけは颯真くんだよ。手紙出しても返事ないし…気になっちゃって。でもね、前々から高校は都会の方行きたいな〜って思ってたんだよ?で、どうせなら颯真くんと、同じ高校がいいなって」
西宮颯真。
私より1歳年上で玲子さんの甥にあたる彼。
8年前に玲子さんが島へ引っ越して来た時、当時小学生だった颯真くんも夏休みを利用して遊びに来ていた。
それが、私と彼とのはじめての出会い。