藤堂くん、もっとぎゅっと抱きしめて
…………ああ、今回は大丈夫だと思っていたのに。
今は10月で少しだけ肌寒い。そんな中、私は机の上に両腕を組み、下を向き、体調の悪さと一人戦っていた。
手がしびれる。冷や汗も止まらない。決して教室が暑いわけではない。
古文の授業中、もう無理だと思った矢先に、「東良。保健室行く?」と、隣の席で保険委員の藤堂直哉くんに肩をツンツンと突かれ話しかけられた。
やせ我慢くらいしたかったけれど、そうもいきそうにないのでゆっくり頷く。
私の頷いた姿を確認した藤堂くんは、「先生、東良さん体調悪いんでオレが保健室に連れていきまーす」と、保健室に連れて行くことを申し出た。
「そうか。じゃあ保健委員、保健室に――」
「オレ、保健委員なんで」
藤堂くんはイスから立ち上がるなり、私の前に移動した。
乗ってと言わんばかりに背を向けしゃがみ込む。
「……あ、ありがとう」
「いいえ」
皆の視線を浴びる中、藤堂くんに体を預け教室を静かに出る。
――また藤堂くんに迷惑をかけてしまった。
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