藤堂くん、もっとぎゅっと抱きしめて
「東良? 大丈夫?」
私の顔を覗き込みながら、背中を擦ってくれる藤堂くん。だけど、症状は治まる気配がない。
『大丈夫だから、もういいから』そう言いたいのに言葉にできない。
「オレに体預けれる?」
……体?
藤堂くんが何を言っているのか理解ができなかった。思考さえも上手く回らない私を、そっと自分の胸に抱き寄せた。
胸を借りていると、激しかった動悸がだんだん和らいでいるのが分かる。
右手は私の頭に優しく触れ、左手で私の背中を擦ってくれている。
――ああ、なんて心地いいんだろう。
あまりの心地よさに胸を借りていると、
「よかった。落ち着いたみたいだな」
その声にハッとさせられた。
――そうだった。私、藤堂くんの胸を借りていたんだ。
飛び上がるように勢いよく顔を離した。
「あっ、ありがとう。落ち着いた」
申し訳なさよりも、今この状況が恥ずかしくて一歩後ずさる。