藤堂くん、もっとぎゅっと抱きしめて
藤堂くんは頬を人差し指で掻きながら、
「こんなんで落ち着くんだったら胸くらい貸すし」
そう言い捨てて、「じゃ、先生呼んでくるから」慌ただしく保健室から出て行ってしまった。
その後すぐに、「東良さん、大丈夫!?」息をきらしながら保健室に入ってきた先生が目の前に現れた。
「今落ち着きました」
「少し横になってなさい。薬は持ってきてる?」
「はい、ポケットに入れてます」
紙コップの中に入っている水と一緒に薬を飲む。藤堂くんの胸を借りて症状が軽くなったといっても、まだ動く気力はなく薬が効くまで少しベッドに横になった。
――少しだけ横になっているつもりだったのに、
「東良ー、大丈夫ー?」
カーテンの向こう側から藤堂くんの声が聞こえてきた。
「えっ……今、何時?」
質問に答えるどころか、逆に質問をし返す私に対して、イヤな表情一つせずに顔を覗かせる藤堂くん。
「もう放課後。はい、今日の授業のノート、全部コピーしてるから」
渡すのが当然というように、ファイルに入れてくれているコピーを差し出してきた。
私が受けれなかった授業は毎回ノートをコピーして渡してくれる。職員室でコピーができるらしい。
藤堂くんがいてくれるから、私は授業を途中で抜けても、なんとかついていけている。本当に頭が上がらない。