藤堂くん、もっとぎゅっと抱きしめて
「直哉、もういいよ。東良さんは私が面倒見とくし」
藤堂くんのことを名前で呼ぶ沢辺さん。二人の仲のよさが窺える。
沢辺さんとはいつも一緒に行動しているわけでもないし、学校生活を過ごす上で日頃からたくさん喋っているわけではない。
上辺だけで面倒なんて見てほしくない。
離れない私を見て藤堂くんは何かを感じ取ったのか、「いや、沢辺は帰っていいよ」と沢辺さんの好意を否定した。
「オレが家まで送って行くから」
「え? な、なんでそこまで直哉が面倒みるの?」
「心配だから。送ってくって決めたし」
……藤堂くん。
朝から面倒を見てくれていたからか、責任を感じさせてしまっている気がした。
一人で帰れるからと遠慮してみるも「ダメ」と止められてしまった。
「送る。鞄持って帰ろう」
「で、でも……」
沢辺さんを見ると、顔を真っ赤にして私を睨んでいるように感じた。
ここで藤堂くんと一緒に帰ってしまえば沢辺さんは私の敵に回ってしまう。そんな気がした。