ベルベット
1
大学は県外を選び、学生寮で一人暮らし。そのままこっちで就職したから、もはや第二の地元みたいなもの。家族にすぐ会える距離じゃないけど、大学時代からの友達もいるし、恋人とも出逢えた。
彼、井上光太朗は二学年下のサークルの後輩だった。街中探検的な趣旨のサークルで、タロウもわたしも、ノリの良すぎる先輩達に引きずり込まれた感じだったけれど、それなりに楽しかった。
タロウは風景写真を撮るのが好きで、わたしはそれを見るのが好きで。社会人になって引っ越したアパートに時々、写真を見せに寄ってくれるようになって、告白されて付き合って。
タロウが社会人になったタイミングで、二人暮らしを始めた。
『俺はちーちゃんと結婚したい』
普段の口数は少ないのに、写真の話をする時と同じくらい滑舌が良かった。
『真下ちはるさん。俺と結婚して下さい』
わりと幼顔のタロウが、その時は世界一の男前に見えた。
彼、井上光太朗は二学年下のサークルの後輩だった。街中探検的な趣旨のサークルで、タロウもわたしも、ノリの良すぎる先輩達に引きずり込まれた感じだったけれど、それなりに楽しかった。
タロウは風景写真を撮るのが好きで、わたしはそれを見るのが好きで。社会人になって引っ越したアパートに時々、写真を見せに寄ってくれるようになって、告白されて付き合って。
タロウが社会人になったタイミングで、二人暮らしを始めた。
『俺はちーちゃんと結婚したい』
普段の口数は少ないのに、写真の話をする時と同じくらい滑舌が良かった。
『真下ちはるさん。俺と結婚して下さい』
わりと幼顔のタロウが、その時は世界一の男前に見えた。
< 1 / 29 >