ベルベット
見る目が変わってほしくない。祈るような気持ちと、噛みしめる覚悟。

タロウがどんなに誠実で他人を思いやれる優しさを持っていたって、現実を考えたら普通に躊躇する。考えさせてくれって言われるなら一縷の望みはあるかもしれない。

もうこれで引き返せない。お腹に力を込めて無理やり笑顔を作った。

「ちゃんと聞いてくれてありがとね。・・・タロウにも聞いていいかな?今の正直な気持ち」

つぶらな黒い眸がわたしを見つめる。ややあって引き結んだ唇が形を崩した。

「・・・・・・マジか、って思ったよ。ちーちゃんもお母さんも、全然そんな風に見えないからさ。騙されたのかって思った、・・・正直」

「・・・そっか」

「ちーちゃんは違うんだから騙してたワケじゃない、・・・よな。・・・分かってんだけど、ちょっと俺、なんかグチャグチャでさ。今言うなよって思ってる・・・」
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