ベルベット
少し間があって、「そうだねぇ」と呟きが返る。

「由弦は、極道でも堅気でも、ただ洋秋を支えたかっただけなんだよ。洋秋が極道に誇りを持ってたからその道選ぶのを迷わなかった、それが由弦のプライドだった。あたしにはそう見えてたなぁ」

なぞるように言葉を選んで、やんわり続けるお母さん。

「でも洋秋ならきっと、娘の為に極道やめるって言っても、笑って背中叩いてくれたろうし。やっぱり由弦は迷わなかったかな?」

「お母さんは・・・、マー君にやめて欲しいって思わなかった・・・?」

お父さんを殺されたのに怖くなかったんだろうか。また失うかもしれないのが。
触れちゃいけない領域だと、子供心ながらに口にしたことは一度もなかった。

「あたしもヤマトも、由弦が果たせなかったことを果たそうって必死で、止まってられなかったからねぇ・・・」
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