ベルベット
タロウは恋人繋ぎをして、わたしの手を引くように半歩前を歩く。

答えはまだ。正解はないかもしれない。これからを考えよう。二人でいるために、家族の笑顔を守るために、どうすれば向こう岸への橋がかかるかを。

「・・・お母さんとなに話したか教えてくれる?」

「帰ったらね」

何だか大人びて聞こえた。包み込むように柔らかく響いた。肌触りのいいビロードのような心地で。

タロウと一緒にあの部屋に帰れるのが、こんなにも幸せに思えた。

駅はもうすぐだ。




FIN


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