ベルベット
「お母さん、車貸してくれないかな?タロウと行きたい所があって」

「ちー、オレが送ってやるから」

「・・・マー君、うざい」

チノパンにシャツを羽織って休日の父親っぽさを装ったマー君が、ドヤ顔で言ったのを却下。あんな黒塗りのレクサスに一般人を乗せる気でいるんだから、全くもう。

夕方までには戻るのを約束して、タロウを助手席に乗せ家を出発した。お盆やお正月、長い休みには顔を出すようにしてるけれど。お店が変わってたり更地になっていたり、間違い探しのように、ところどころ地元も風景が変わっている。

「お父さんのこと、マー君って呼ぶんだね」

タロウがふと感心げに頷く。

「仲が良いね」

「仲良いっていうか、マー君が子離れできないっていうか」

「お母さんも、さっぱりしてるのにすごく愛情が深そうで・・・。好いお母さんだよね」
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