ベルベット
『わたしも、ずっとタロウのそばで一緒に歳を取りたい』

プロポーズにはそう答えた。純度100%の愛情で、彼が心から愛しい。嘘偽りない気持ちをタロウがどこまで信じてくれるのか。自分は信じてもらうに足りてる人間だったかどうか。

タロウは驚いたように目を瞠り、少し口が半開きになっていた。それから、訳が分からないとでも言いたげに泣きそうな顔をした。

「結婚できるか・・・って。ちーちゃん、なんでだよ」

「わたしはわたしで、お父さんやお母さん達とは親子でも生き方は別だと思ってる。・・・そう思って聞いてくれないかな」

わたしは真っ直ぐ見上げて静かに微笑んだ。

タロウもわたしをじっと見据えていた。手探るように確かめるように、眸の奥が揺れている。不安、戸惑いが()い交ぜに。

「・・・・・・分かった。聞くよ」

何かを逃すように小さく息を吐き出しながら、しっかり頷き返してくれた。
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