婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

 会議が終わり、何食わぬ顔で昼の休憩をセシルと過ごして執務に戻った。

 執務を片付けて、一枚の白紙を取り出して今後の計画を書き出していく。夜更けの執務室には優しい月の光が差し込み、俺が走らせるペンの音が静寂に溶けていった。

 イリアスを帰らせてから、もう二時間が経とうとしていた。どうしてもまとまらない計画に、思わずため息をつく。
実はセシルには何度も暗殺者や間者が送り込まれている。

 毒を盛られたことも一度や二度ではない。ノーマンやセシルにつけている専属侍女は、皇族の影として訓練を積んだ者たちで、それぞれ特技を生かしてセシルを秘密裏に守るように命じていた。

 ノーマンの本職は結界魔術士だし、専属侍女は鑑定眼のスキルがある。この前は毒入りの食事を失敗したふりで派手に処分していた。演技が下手くそだったが、セシルが気付いてなかったので目をつぶってやった。

 この犯人たちをどの様に追い込むのが効果的かと考えていた。セシルを亡き者にしようとする輩は複数いるようで、なかなか尻尾を掴めず危険な状況は変わらない。

「それに、なによりもセシルは皇后になんの執着もないんだよな……」

 俺の仮面に触れてもまったく痛みを感じていない。つまりセシルは俺を利用して、金や名誉や権力などを欲してないということだ。


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