婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「それとも、皇帝じゃないとセシルを幸せにできないとか馬鹿なこと考えてるわけ?」
「いや、そうじゃない。セシルは皇后の立場になんの未練もないんだ」
「なによ、それがセシルのいいところじゃない。自分のためにはビックリするくらいなにもしないのに、人のためならとことん頑張るのよ、あの子は」
そんなのわかってる。あんなに文句を言いつつも、俺の身体を気遣って丸薬は作ってくれるし、呪いの被害者や、罰を受けた魔女にだって手を差し伸べるんだ。
そんなセシルだから愛おしい。
だからこそ俺はセシルを守りたい。
「そうだな。それならこんな危険な場所からセシルを解放しよう」
「あら、やっと決心したの。ほんと頼りない男ね。次からは私が尻を叩かなくても、さっさと決めなさいよね」
「ああ、すまないな」
「じゃぁ、セシルを頼んだわよ」
それだけ言って、アマリリスの魔女は影の中へと姿を消した。
そうだ、セシルを解放しよう。
こんな堅苦しい生活から、皇后という立場から。
俺はただ、この決断でセシルが幸せになるのだと信じるだけだ。