婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「わかったわ。それなら、わたくしは屋敷を出ていきます。でもお兄様、わたくしはお母様がお父様を騙しているなんて知らなかったの。だからそれは見逃してもらえないかしら?」
「シャロンッ! あなた、母親を見捨てるの!?」
「犯罪者の母親なんていらないわ。わたくしだって、お母様のせいで罪に問われるところだったのよ!」
強く言えばお母様は口を閉ざした。膝をついて呆然としている。こんな犯罪者が母親だったなんて本当に勘弁してほしい。
「わかった。屋敷から出ていくなら善処しよう。それから、明日には貴族籍から除名するから、そのつもりで」
「ええ、大丈夫よ。そうだわ、そこの犯罪者の処分はお兄様に任せるわ。わたくしはもう聖女じゃないから」
「……わかった。家紋なしの馬車であれば、出ていく時に使ってもいい」
「まあ、ありがとうございます。お兄様」
こうしてわたくしは侯爵家から身ひとつで出ていくことにした。御者に行き先はフューゲルス公爵家だと伝えた。