婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
第五章 突然の解放宣言
約束の期間が折り返しを迎えて、私は焦る気持ちを抑えて解呪を進めていた。
幸いにもミリアムがしっかりと仕事をしてくれているので、解呪に専念できている。ノーマンとも気が合うらしく、フィオナも一生懸命手伝っていると聞いた。
本格的の腰を据えて、いざこれからという時だった。
「セシル、ひと月後に解放する。皇后は辞めていい」
「え?」
一瞬、なにを言われたのかわからなかった。
いつものように膝枕をして、いざ解呪をはじめたところだ。
契約期間はまだ五カ月以上は残っている。解除だってやっと糸口を見つけたところだし、なによりも約束が違う。
「どうした? 嬉しくないのか?」
レイが不思議そうな顔で、仮面の奥から深い海のような瞳をのぞかせる。
「え、いえ、違うの。突然すぎてビックリしただけよ」
「そうか? まあ、いい。解呪は終わっていなくても問題ない」
つまりそれは、私以外に仮面に触れられる人が現れて、用済みになったってことだろうか。ぼんやりとした頭でそんな風に考えていた。