婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「それなら、もう解呪しなくてもいいの?」
「そこはセシルに任せる。解呪できるなら、それはそれでありがたい」
「ちゃんと……やるわよ。適当なことしたくないし」
「では頼む」
そうだった。すっかり忘れていたけど、私は必要とされるような存在じゃないんだ。今までリリス師匠に甘やかされて、レイだって夫婦として仲のいいふりしているうちに、勘違いしてしまったようだ。
実際、仲のいいふりはしているけど、愛を囁かれたことはない。
そうなのだ、レイは今まで一度だって私に好意を伝えていないのだ。そんな気持ちなんて最初からなかったのだから当然だ。
なのに、なぜこんなにも心が沈んでいくんだろう?
最初からわかっていたことなのに。私がここに来たのは解呪をするか、後継者を産むためだ。どちらも必要ないなら、用済みじゃないか。
レイはいつものように目を閉じて、穏やかな顔で眠っている。
渦巻く感情に蓋をして、この寝顔を見るのはあと何回だろうとひっそり思った。