婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

 フィオナの洗礼の儀式をした翌日、解呪の時間にレイからある提案をされた。

「今日はこの後なにか予定はあるか?」
「特にないわよ。どうして?」
「そうか、それなら一緒に行きたいところがある」
「どこへ?」
「いろいろ……だな」

 明言しないレイに釈然としないものの、フィオナもまだ目を覚まさないから問題ないかと、侍女たちに準備を進めてもらった。

 用意された衣装は、皇后らしいドレスではなく育ちのいい町娘のようなロイヤルブルーのワンピースだった。コルセットも不要なので、自分で着ると言って身支度したくらいだ。

 そこへ例も準備を終えてやってきた。レイもいつもの皇帝の衣装ではなく、布地こそ高級だけど、デザインは商会の息子が着るようなアイボリーのシャツに濃紺のジャケットとスリムなスラックスを身につけている。

「うわ、いつもと全然違う! こういうのも意外と似合うのね」
「こういう衣装の方が着慣れているんだ。セシルもよく似合ってる」

 柔らかく微笑むレイにドキッとする。でも、この部屋にはまだ侍女たちがいるから、すぐに演技だと思い出した。お揃いのブレスレット型の魔道具をつければ、周りには違う姿で見えるようになると聞かされた。

 しかしこの魔道具は一般的には出回っていない代物だ。こんなふうに姿を変えられたら犯罪に使われてしまう。さすが皇帝は違うと感心した。


< 129 / 215 >

この作品をシェア

pagetop