婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

「この格好をするってことは、街に出るの?」
「ああ、買い物に付き合ってほしい。夕食も街で食べる予定だ。いいか?」

 仕事以外で街へ出かけると思うと、心が軽くなった。やっぱり皇城で貴族のように生活するのは、私には合っていないのだ。

「もちろん! ねえ、屋台も食べたいのがあるんだけど、いい?」
「くくっ、好きにしろ。寄りたいところがあったら言ってくれ。時間が許す限り付き合う」
「やったー! えー、じゃあ、どの屋台がいいかなあ。串焼きは外せないよねー、あと、クレープも食べたいし……」
「食べ切れる量にしろよ」
「当然、全部食べるから!」

 そんな感じで私はウキウキしながら街に繰り出した。



 街の中心部は活気にあふれ、大勢の人たちが通りを闊歩している。親子連れや友人同士、カップルなどさまざまだ。三階建ての建物が並び、一階や二階は店舗として、上の階は住まいとして使われている。

 私が住んでいた時の帝都よりも断然明るく賑やかになっていた。レイの治世がうまくいっている証拠だろう。

「帝都なんて久しぶりー! まだあのお店残ってるかな……?」
「セシル。最初に行きたいところがある。ここだけ先に済ませてもいいか?」
「ええ、もちろん。どこなの?」
「ユニバル商会に行く」
「なにを買うの?」
「家だ」


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