婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
独り立ちするまでは、開花させた魔女に最大限の敬愛を示せという我らの掟があるからだ。その代わり開花したばかりの魔女の不始末はすべて、面倒を見ている魔女の責任になる。
「うん、私は皇城へのルートは閉じちゃったから、外から入れないの。お願いできる?」
「それは大丈夫ですけど……影移動のルートを閉じちゃったって、どうしてですか?」
「あー、ほら出ていった皇后がウロウロするのってよくないでしょう?」
「うーん、そうですか? でも陛下は——」
「フィオナ、ほら、ここの宿に決めたわ!」
もうレイの話はしたくなくて、さっさと宿を決めた。
部屋に荷物を置いて、すぐに賃貸の部屋を斡旋してくれる業者を訪ねた。
帝都ジュピタルの中央通りに面している建物の二階にあり、私とフィオナにも愛想よく接してくれる。認識阻害の魔道具のおかげで、魔女だと忌避されずスムーズに話ができて助かった。
すぐに住めて薬草の知識があって店を開くから、店舗と住居が一緒になっている物件を希望だと告げる。
「そうですねえ……即入居できてお客さんの希望だと、家賃はちょっと高めですがこの通りから二本奥にあるこの部屋か、町外れにある一戸建てが希望に近いですよ」
そう言って二枚の見取り図を渡してきた。町外れの方が広いが、中心部から距離があり集客に不安があるが住むにはよさそうだ。
反対にここに近い部屋はメゾネットタイプで部屋は狭いが、立地がいいぶん集客は苦労しなさそうだと感じる。
映像水晶で部屋の中を見せてもらい、少しだけ考える時間をもらった。