婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
すっかり目が覚めてしまったけど、まだ起きる気にはならない。ゴロゴロとベッドを転がってボーッと天井を眺める。
「レイは今頃なにしてるのかなあ……」
もう新しい妃は来たのだろうか? 私にしたみたいに、膝枕で眠ったり薬を飲ませてもらったりしてるのかもしれない。
ふとした時に、こうやってレイを思い出す。その回数が多すぎて笑えるほどだ。休みなくなにかをしていないと、頭に浮かんできてしまう。そして新しくやってきた妃と仲睦まじくしているところを想像しては、自分の心を抉っていた。
「ダメだなあ……こんなんじゃ」
やっぱり金髪碧眼は鬼門だった。
それなのに、なんで好きになってしまったんだろう。
仮面の奥から覗くコバルトブルーの瞳が頭から離れない。
実は夜もあまり眠れていなかった。今までずっとそばにあった温もりが急になくなって、やけに寒く感じた。フィオナにレイの様子を聞いてもらおうかと思ったけど、想像が現実になるのが怖くてなにも聞けずにいる。
本当は臆病な自分はあの頃からちっとも変わってない。
思ったことの半分も言えればいいほうだ。傷つくのが怖くて、いつも魔女の仮面をかぶって虚勢を張っている。
でもレイにだけは感情の赴くままぶつけられた。出会いがあんなだったからかもしれないけど。
なにを言っても余裕で受け止めてくれて安心した。
蔑むことなく優しく見つめてくれた。
私を求めてくれて嬉しかった。
期間限定だったけど、私はここにいてもいいんだと思えた。
「甘えすぎちゃったのかな……」
こんな風にぐずぐずしている自分に嫌気がさすけど、自分を変える方法もわからない。泥沼のような思考から抜け出せず、今日も眠れない夜を過ごした。