婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
* * *
「ちょっと! 戻ってくるのが遅すぎるのよ! なにをやっていたの!?」
私は三時間前に用事を言いつけた若手の執事を、怒鳴りつけた。ただ出来上がった魔道具を受け取りにいっただけなのに、なぜこんなに時間がかかるのか意味がわからない。
苛立ちをぶつけるように、飲んでいた紅茶をカップごと投げつける。執事の肩に当たってカップは床に落ち、執事は紅茶まみれになった。
「シャロン様、大変申し訳ございません! 実は途中で破落戸に襲われて、魔女の秘薬で治療を受けていたのです」
「そんなのわたくしには関係ないでしょう! もともと鈍臭いのを我慢して使ってやっていたのに言い訳する気!?」
「申し訳ございません!!」
使用人の分際でわたくしに口答えすることに腹が立つ。今やわたくしはフューゲルス公爵夫人なのだ。
でもこの執事の口から魔女という言葉が出てきた。この帝都には魔女なんていないはずだけど、もしいるなら呪いの制服の時のようにうまく使えば、セシルにダメージを与えられるかもしれない。
「ねえ、魔女と言ったわね。どこにいるの?」
「は、はい。メインストリートから二本裏に入った通りにある薬屋です」
「そう。まあ、今回はその情報で許してあげるわ。下がりなさい」