婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
セシルの魔力はまだ感じない。どこかに閉じ込められているのかもしれない。
「陛下、お待ちください。第一騎士団もすぐにやってきます。頭数を増やして捜索したほうが……」
「大丈夫だ、俺はセシルの魔力がわかる」
「は……? それは本当ですか?」
「ああ、セシル限定だが、俺が捜すのが一番早い」
「ははっ、そうですか。承知しました。では陛下の背中はオレがお守りいたします」
「頼んだ」
フューゲルス公爵邸は端から静かなものだった。しかし使用人の姿が見当たらない。これほどの規模の人の気配がしない屋敷は不気味なほどだった。
屋敷の中を進んでいくと、兵士と執事が床に座り込んでいた。
「兄さん、大丈夫? 薬を取ってくるから待ってて」
「オレはいいから! 他の奴らは逃げたな? お前も早くここから出ないとっ!」
「おい」
俺が声をかけるとふたりはビクッと肩を震わせ、固まってしまった。よく見ると若い青年でどこか幼さが残る顔立ちだ。
兵士の方は足を怪我しているのか、布を巻いているが血がにじんでいる。