婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「皇帝……陛下!?」
「申し訳ありませんっ! 僕がすべて悪いのです! 兄はただ、僕を助けてくれただけなのです!」
「おい、俺が聞きたいのはそんなことじゃない。ここにセシルが……魔女がいるだろう? どこだ?」
「えっ? 魔女様?」
「っ! 魔女様を捜してどうするんですか!?」
どうやらこの青年たちはセシルを知っているようだ。しかも魔女様と敬意を持って呼んでいる。
俺の妻はどこでもサラッと人をたらし込んでしまうのだ。
「俺はただ愛しい妻を助けにきただけだ。案内しろ。お前たちも悪いようにはしない」
「……本当に助けていただけるのですか?」
「あの人はオレたちを二度も助けてくれたんだ。嘘だったら血の果てまで追いかけて、捕まえるからな!」
これだけの短期間でこんなにも人心を掴むとは、俺でもセシルには敵わない。さすが俺の惚れた女性だ。
「彼女は俺の愛しい女神だ。早く教えてくれ」
「地下牢にいます……ここをまっすぐ進んで、突き当たりを右に曲がり階段を下りれば。その先が牢屋になっています。お願いします、魔女様を助けてください!」
「わかった、任せろ。ブレイリーはこのふたりを頼む。援軍が来たら、地下牢に来てくれ」
「承知しました。お気を付けて」
セシルの居場所がわかった。もう今度会ったら離さない。俺がずっとそばで、セシルのすべての憂いを取り払うんだ。
俺は廊下を駆けた。
彼女の敵を完全に排除るすために。
愛しい彼女を助けるために。愛しい彼女を守るために。
愛しい彼女に、会うために。