婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
残っていた兵士たちがエルベルトの指示で剣を構える。
魔剣士が三人に魔術士がふたりだ。いずれも魔力の強さから団長クラスだとわかる。先ほどまでの私の攻撃を凌いでいたのだから、実力は十分だろう。
「レイ、魔術士は任せて」
魔術士のうちのひとりが、私に魔封じの腕輪をつけた人物だった。
いくらなんでも、解呪している最中に魔力を封じるなんてあり得ない。呪いのアイテムをつけた青年になにかあったら、どうする気なのだ。
「いや、これくらい俺ひとりでも……」
「嫌よ。こんなところにぶち込まれて、黙ってられないわ。魔女のプライドに賭けて、全力で叩き潰すと決めたの」
「くくっ、セシルらしいな。わかった、そっちは任せるが、無理はするな」
レイは魔剣士に、私は魔術士に、それぞれ対峙する。
魔術士は魔力を術式に流し込んで使うから、圧倒的に魔女の方が有利だ。魔法発動までのタイムラグがない。
「あんな卑怯な真似しかできないんじゃ、私の敵にもならないだろうけど」
「くっ!」
【北方の星は南方の剣に落ち、我らの王は地獄の炎を召喚す。閻獄の炎よ、敵を焼き尽くせ。ヘルファイア!!】
ひとりの魔術士が上級魔法を放ってきた。