婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「仕方ないわね、わたくしが直接、お姉さまを始末してあげるわ。感謝してね?」
「……っ」
私は無理やり魔力を練り上げて、刃と化した黒い雪の結晶を放った。その魔法はシャロンの頬を掠めて飛んでいく。
「ふふっ、無駄に足掻くのはみっともな——」
「ぐわっ!」
私が狙ったのは、エルベルトの指輪型の魔道具だった。鋼鉄をも細切れにした強度でなかったから、見事に指輪の魔石が破壊されている。あの古の魔道具さえなければ、自由に動ける。
「はあ、あー、苦しかった。ほんと嫌な魔道具ね」
自由になったので、余計なことをしないようにエルベルトも黒い雪の結晶で動けないようにしておいた。
「本当にどこまでも忌々しい女ね!」
そう言ってシャロンは慣れない剣を振り上げる。
でもその切っ先が私に振り下ろされることはない。だって——
「おい、俺のセシルになにをするつもりだ?」
——シャロンの背後から、怒りに任せて覇気を放つレイがその首に剣を突きつけていたから。
レイは危なげなく三人の魔法騎士を倒し、私のもとに来てくれた。
「あ……ああ、こ、これは……」