婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「戻ってくることはないけど……素直になってみようとは思う」
私はレイに自分の気持ちを伝えようと決意していた。
本当は気持ちを伝えるのが怖い。
今まで家族から邪険にされて、見捨てられて、婚約者にだって裏切られた。好きな人だからこそ、信じるのが怖かった。
信じて裏切られたらと思うと、素直になれなかった。でも、もう裏切るとかそういう風に考えるのをやめた。
私は好きな人を信じて、彼の幸せを願いたい。
例え他の人を新しい妻に迎えるとしても、ただ彼が幸せになるために、自分のできることをしたかった。
すごく勇気がいるけど、レイが幸せになるためなら頑張れる。
「セシル、なにかあったの?」
「うん、多分だけど一生に一度の恋をしたみたい」
今ならわかる。エルベルトへの気持ちは本当の愛ではなかった。
純粋に好きというよりは、根底に打算があったのだ。あの状況から逃げ出したかった私は、エルベルトを利用しようとしていたのだ。だから私が愛されることはなかった。
レイが『離縁はしてないし、する気もない』と言っていた意味は、直接会って聞いてみようと思う。あまりにも新しいお妃様を泣かせるようなことを言うなら、一発魔法をぶち込もう。
私の大好きで大切なレイが幸せなら、それでいいと思った。