婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
アマリリスの魔女は闇魔法で影から影へ一瞬で移動する。瞬きするあいだに景色が変わり、連れてこられたのは森の中にある小さな一軒家だった。
「ここが私の家よ。帝都からはかなり離れてるけど、独り立ちできるまでここで一緒に暮らすわ」
「はい、よろしくお願いします」
そうして魔女になるための洗礼を受けた私は、その衝撃で意識を失った。
意識を取り戻して目を開けると、窓から優しく月光が差し込んでいる。
灼熱の炎に体の内側から焼かれるような衝撃が夢だったみたいに、今はなんでもない。むしろ魔力の巡りもすこぶる良くなって調子がいいくらいだ。
そこで「入るわよー」という声とともにアマリリスの魔女がツカツカとベッドサイドまでやってきた。
「うん、大丈夫みたいね。綺麗に『開花』してるわ。ほら、見てみて」
差し出された手鏡を覗いてみると、驚くことに私の瞳はグリーンから血のような紅い瞳へ変化していた。
よく見ると虹彩に濃淡があり花が咲いているようだった。魔女はこうして真紅の瞳になるのだと知る。
「これが魔女になった証よ。おめでとう、私のことはリリスと呼んで。明日から色々教えるわ」
「はい! リリス師匠、よろしくお願いします!」
「し、師匠……? ふふ、いいわね。それも面白いわ」
そう言って柔らかい微笑みを浮かべたリリス師匠に、姉がいたらこんな感じなのだろうかと心が温かくなった。
こうして魔女としての私の人生が始まった。