婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
第二章 悪魔皇帝の妻になりました
リリス師匠から独り立ちしてもう一年が経つ。私は帝国を出て、隣国で解呪の魔女として暮らしていた。
この国は帝国ほど魔女に対して忌避感はなく、国境をまたげばこうも違うのかと驚いた。とても平和な毎日を過ごせていて、最近では近隣の国から訪ねてくる人もいるくらいだ。
「解呪の魔女様、本当にありがとうございます! やっと、やっと息子の目が見えるようになりました! こちらはお礼です、どうぞお受け取りください!!」
「……え、提示金額より多いけど?」
とある商人のご子息の目が見えなくて、藁にもすがる思いでやってきた親子だった。視てみたらガッチリ呪いがかかっていたので、サクッと解呪したのだ。
少年の夕陽色の綺麗な瞳が輝きを取り戻し父親はむせび泣いていた。ただそれだけのことなのに、大袈裟すぎる。
「これでも足りないくらいです! 他のヤブ医者に注ぎ込んだ金貨があればもっとお礼できたのですが……申し訳ありません」
「謝らないで、十分すぎるわ」
それなのに親子は何度もお礼を言いながら帰っていった。
解呪の料金は事前に伝えるのに、今回のように多めに払っていく人もいる。そんな時は多めにもらった分をこの国の孤児院に寄付することにしていた。
独り立ちする時にリリス師匠が解呪の報酬だと持たせてくれた金貨もまだ残っているし、解呪の依頼もたくさん来るので生活には余裕がある。