婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
それでも最初の三カ月は魔女としての一人暮らしに慣れるので精一杯だった。半年を過ぎた頃には少し精神的な余裕もできて、順調に仕事をこなして報酬を稼いできた。
市井での生活が長くなるにつれて平民のような話し方にも馴染み、今はこぢんまりしたアパートの一室で解呪の仕事をこなしている。
「さて、今日の仕事も終わったし、寄付は明日にして早めにお風呂に入っちゃおうかな〜。この前買った入浴剤試したいんだよね」
ひとり暮らしになってヤケに増えた独り言をつぶやき、浴槽にお湯を溜めていく。その間に着替えの準備をしているとドアを激しくノックする音が聞こえてきた。
「え、もしかして急ぎのお客さん? はあ、仕方ないか……お風呂は後ね」
解呪の依頼はそれこそ二十四時間やってくる。すで時間は夕方を過ぎていた。この時間にやってくるなら、そこそこ緊急性があるのだろう。それならば無視することはできない。
その代わり依頼がない時間は気の向くまま好き勝手に過ごしているのだ。
私は浴槽のお湯を止めて玄関の扉を開く。するとそこに立っていたのは、旅人の格好をした四人の若い男性だった。近隣の国から山を越えてやってくるお客さんもいるので、旅人は珍しいことではない。
お風呂に入る前に気づいてよかったと心から思った。
「あなたが解呪の魔女で間違いありませんか?」
「ええ、間違いないわ」
「よかった……やっと見つけました。それではご同行願います」