婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
たまにいるのだ。こうやって使いだけ寄こして、私が訪ねるのが当然とばかりにふんぞり返る人たちが。
もちろん呪いで動けない人なら私から訪問するけど、その場合だってまずは事情を説明するのが先だろう。
そういう偉そうな人が往々にして支払いを渋ったり、報酬が高すぎると文句を言う。
「嫌よ、私はどこにもいかないの。呪いを解いて欲しい人がいるなら、ここに連れてきてくれる?」
「申し訳ありません。ここでは事情を話せませぬゆえ、無礼を働きますことを先にお詫びいたします」
噛み合わない会話に「話を聞け!」と言いたくなるのをこらえた。
マイルドに文句を言おうと口を開いたところで、使いの男に一瞬で手首を取られる。
カチリと音がしたかと思ったら銀色の腕輪がつけられていた。
瞬間的に魔法を使おうとしたけど、なんの反応もない。どれだけ魔力を込めても銀の腕輪がすべて吸い取っていく。私の手首につけられたのは魔封じの魔道具だ。
「えっ、ちょっと、これ取ってよ! 魔法が使えないんだけど!」
気が付いて抵抗しようとしても、まったく取り合ってもらえない。呪いと違って魔道具は魔術の術式を使っているので、術式を解く鍵がなければ外せないのだ。
この状態ではその辺の街娘と変わらない。