婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
男性たちは眉尻を下げながらも、有無を言わせない態度で私を引きずっていく。
「待って! 浴槽にお湯貯めっぱなしだし、戸締りもしないと! それからベランダで育ててる薬草に水もあげないと!」
「承知しました。すべて私たちが対処します」
悪あがきしてみたけど、華麗にすべて片付けられて文句も言えない。ご丁寧にしばらく留守にしますと張り紙をして、扉の鍵までかけて私に鍵を渡してきた。
それにしてもおかしい。普通の人間相手におくれをとったことはなかったのだ。
私が敵わないとしたら、それこそ訓練を積んだ騎士や魔女並みに魔法が使える魔術士かのどちらかだ。
「ねえ、あなたたち何者なの?」
「申し遅れました。私はディカルト帝国、第一騎士団長のブレイリーと申します」
帝国の騎士と聞いて三年前の婚約破棄の光景が頭の中に甦ってきた。慌てて苦い思い出を振り払うも、帝都に戻ったら捕まってしまうと青くなる。それもあってわざわざ隣国までやってきたのだ。
「ねえ、まさかと思うけど、帝都に行ったりしないわよね?」
「いえ、このまま帝都までご案内します。そう命令を受けております」
「え! 待って! 私、帝都に戻ったら捕まっちゃうの! だから一緒にいけないわ、離してよ!」