婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「ちょっと待ってよ! 今のは了承じゃなくて、疑問の——」
「どうぞ、サインをお願いいたします」
問答無用で婚姻宣誓書と書かれた羊皮紙を私に押し付けてくる。その笑顔の圧が凄くて、思わず受け取ってしまった。いくら魔女だといっても自分からなにかを主張するタイプではない私には、この空気に逆らうのは難しい。
ふと周りに目を向ければ、この部屋にいる五人の重鎮たちも固唾を飲んで見守っていた。
悪魔皇帝はさっさとサインしろとばかりに私を睨みつけているし、目の前の側近はニコニコしたまま無言の圧力をかけ続けてる。魔力封じの腕輪はしっかりと手首にぶら下がっていて外れないし、いつの間にか背後に回った騎士団長が退路を塞いでいる。
「心配するな。お前に愛を求めないが、ちゃんと可愛いがってやる」
いやいやいや! 可愛いがらなくていいから、ここから帰してくださいっての!!
ただの魔女に悪魔皇帝の子を産めとか、なにアホなこと言ってんの!? 頭沸いてるんじゃないの!?
どうしてこんなことになったのか、全然、まったく意味わかんないわ——!!
もしも私の人生が大きく変わってしまったというなら、それは三年前の婚約破棄にさかのぼる。