婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
はあ!? 一ヶ月ですって!?
そんなの、無理に決まってるでしょ! あのレベルの呪いは下手すれば五年はかかるのよ! これだから自分の基準でものを決める偉そうな男は嫌なのよっ!!
「ひと月は無理! ものによっては年単位でかかるのよ!」
「では一年だ。それ以上はこちらも無理だ」
「……わかったわ」
本当に、本当にイヤイヤ羊皮紙に署名する。するとふたりのサインが書かれた文字が青く光り、私と悪魔皇帝の胸元に吸い込まれて消えた。
あの悪魔皇帝と繋がりができてしまった。
これは離れていても居場所がわかるような魔法契約だ。おまけに呪いのことは口外できないように制限がかけられた。最近では廃れてしまった方法なのに使ってくるとは、本当に切羽詰まっているのかもしれない。
「ではセシル、よろしく頼む」
「はあ、よろしく」
こうして私の愛のない結婚生活が始まった——はずだった。