婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
第三章 魔女と悪魔皇帝の攻防
悪魔皇帝が私の夫になった。
なんとか交渉して一年の猶予をもらい、後継者を産む役目は保留して解呪の魔女として役目を果たす。ここまではいい。
「それなのに、なんで初夜だからってこんなの着なくちゃいけないのよっ!!」
婚姻誓約書にサインしたあと皇后様の部屋まで案内すると言われ、やたら豪華な部屋に通された。侍女たちに言われるがままゆっくりと湯につかって、全身を磨かれた頃にはもう月が煌々と輝いていた。
お腹がすいたと言えばサッと食事が用意され、至れり尽くせりの環境に流されたのは確かに私だ。
でもまさか初夜だからって、ヒラッヒラでスケッスケのいかにもな夜着が用意されているなんて予想してなかった。
いや、侍女たちはいい仕事をしている。
貴族の初夜とはこういうものだと私が失念していた。しかも着ていた服を返してほしいといっても洗濯中だと言われたら「ありがとう」と返すしかできなかった。
そもそも今回の話はあの場にいた五人の高官と騎士団長のブレイリー、宰相のイリアスと夫であるレイヴァン皇帝しか知らない話だ。他の貴族や周辺国、帝国の民には周知だけして、皇帝の顔の傷が癒えたら結婚式を執り行うと伝えている。